GOTH番外篇 森野は記念写真を撮りに行くの巻
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あらすじ
『GOTH 夜の章』『GOTH 僕の章』に続く、GOTHシリーズ番外編。
写真集に添えられた書下ろしを小説として独立させたもの。
森野夜は、7年前のその日に少女が殺害され、死体が遺棄されたていた現場に訪れ「死体のフリ」で記念写真を撮ろうとしていた。
森野は、ちょうどその場にいた写真家の男に写真撮影を頼む。
彼は7年前の少女殺害犯だった。
彼には人の「嘘」が見えた。被写体の嘘を排除しようと努めたが、どうしても人は自分を守るため自己演出してしまう。自然な写真を撮ることに絶望した男は、自意識の宿らない被写体として死体を作った。
殺人者を引き寄せるホルモンを持つ「森野夜」も、男に狙われる。
森野夜を巡り「僕」と 男の頭脳戦が始まる。
感想
『GOTH 夜の章』『GOTH 僕の章』に続く番外編なので、最初から順番に読むことを推奨。森野を車に乗せるため男が使ったトリックとかじゅゆような部分が、この作品の中では分からない。
写真集に添えられた小説ということで、カメラマンの口を借りて語っているが「自分を守るための自己演出に対する罪悪感」は、乙一さんの作品によく出てくるテーマでもある。
実際のところ「自己演出ではない本当の自分」というものがあるのだろうか。
人間は社会的な仮面を含めて「本当の自分」なのが当たり前だと思う。
GOTHシリーズの「僕」はある意味「ごく普通」の人間なのかもしれない。
森野夜にしても「ある時期までに受けた社会的影響に形づくられた性向」が「自分の本質」だと思っているだけだ。インパクトの強い出来事の影響で固定され、柔軟性を失ったともいえる。
虚心坦懐に見れば、人は社会に流されているだけなのかもしれない。
本作では「自己演出をはぎ取るには死しかない」という皮肉になっている。
だからこそ「そこでどうやって生きていくのか」がドラマになるのだろう。