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ゲーミフィケーション ―<ゲーム>がビジネスを変える

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要約

「ゲーミフィケーション」の解説書。
ゲーミフィケーションが広くビジネスに取り入れられてきた背景を分析し、実際の運用方法を提案していく。

  • ゲーミフィケーションとは何か

ゲームの広がり
例えば、政治家が演説で「国民一人一人に自分の問題として捉えて欲しい」と訴えても、聴衆がそれを「自分事」と認識することはまずない。

そこで、人を動かすために古くから使われてきたのが「物語」だ。分かりやすい物語で聞き手の感情を動かし、自分事として動いてもらうことができる。

また近年では物語の拡散に「ソーシャルメディア」の力が使われている。
さらにそこに「ゲーム」の要素を組み込むことで、物語を「知る」だけでなく「行動」へとつなげ、自発的持続的に取り組ませることが可能になった。


ゲーミフィケーションとは何か
ゲーミフィケーションで現実世界の出来事にゲーム性を付与していく。必ずしもパッケージとしてのゲームである必要はない。
著者はゲーミフィケーションを「外発的動機との境界的な要素(報酬)を求めるうち、内発的動機が駆動するようなメカニズム」だと定義する。


ゲーミフィケーションのインパクト
2010年前後にゲーミフィケーションを導入した具体的事例を紹介。


ゲーム環境の拡大
ゲーミフィケーションの考え方自体は古くからあったが、近年になって拡大してきたのは環境が整ったから。
①センサーやスマホなど技術の発達と普及
②ネットやSNSの発展によるスケールと反応の即時性
③ゲームに慣れ親しんだ世代の拡大
の影響が大きい。

  • ゲーミフィケーションの実践

実践のステップ1 :着想
①関係性の強化
 顧客との関係など現状で問題を抱えている点はないか。
②フィードバックの可視化
 フィードバックがをより明示的にできる活動はないか。
③ハマる行動の分析
 行動にハマるまでの「きっかけ」を再現できないか。
④技術の変化
 スマホの高機能化などで、新たにできるようになったことはないか。
⑤ルールの改良
  ルールを改良する中で新しいゲームを作れないか。
⑥ルールの融合
 ゲームのルールを融合したり分化することで新しいゲームを作れないか。
⑦ビジネスモデルから
 既存のビジネスモデルを見直す視点から、ゲームを作れないか。


実践のステップ2 :作り上げる
①レベルデザイン
 順序の設計。まず操作を覚え、次のステージで応用するなど。
②アンロック
 レベルアップやアイテム入手などでできることを増やしていく。
③ランキング
 対象範囲限定のランキングなど、モチベーションを下げない工夫が必要。
④課金
 お金でできることの設計は繊細に行う必要がある。
⑤強制
 無理やりやらされると楽しめない。
⑥ほどよい挑戦感覚
 レベルデザインやアンロック、難易度の自動調整など。
⑦フィードバック効果
 短時間でのフィードバック、フィードバックの明示化など。
⑧ズルの応用
 チート阻止のためのバランス調整。敢えてズルを組み込む手法もある。

実践のステップ3 :洗練させる
①テストプレイ
 想定ユーザに合わせたテストプレイヤーに評価をしてもらう。
②リリース後
 ユーザの実際の行動を確認し、ゲーム内容を調整する。


ゲーミフィケーションに典型的な問題
①設計者の偏り
 多様な立場があることを考慮して、偏りのない設計とする。
②プライバシー
 ライフログ系のゲームなどは情報管理に気を付ける。
③ズル
 設計者の意図から外れた解法を取るユーザに対応していく。


ゲーミフィケーションの根源的な争点
①やりがい搾取
 ゲームが搾取に繋がる可能性。楽しむだけの絵師による価格破壊など。
②仕組みの固定化
 評価方式などが固定化され、変化への対応が遅れる可能性。
③バーチャルとリアル
 RMTなどで現実世界に悪影響をあたえる可能性。
④望まれないゲーミフィケーション
 戦争での活用など。

感想

孔子が「これを楽しむものに如かず」といっていたように、成果を上げるには「楽しむこと」が最適解だという認識は数千年前からあった。

それが「ゲーミフィケーション」という形で急速に広がったのは、社会の要請と、環境整備の両面があったのだと思われる。

会社などの組織で家族的に価値観共有することがなくなっていき、さらにソーシャルメディアを通して緩い巨大つながりもできた。
人を動かすには「物語」が必要だけれど、緩い結合では個別に伝えることも共有することも難しい。
そんな中で、半自動的にエンゲージメントを高める手法としてゲーミフィケーションが有効だったのだと思う。

スマホなどハードの技術進歩、ネットなどのインフラの整備など、環境要因も「準備が整っていた」ということなのだろう。


それだけにこの分野の進歩は急速だ。
本書は2012年に出版された8年ほど前の本だが、紹介される事例は完全に陳腐化して古臭く感じる。
「十年一昔」というが、ゲーミフィケーションの分野では「8年前は太古の伝説」くらいの感覚かもしれない。

これからもさらに現実世界に食い込んでくるのだろう。

とりあえずビジネスの世界に課金ガチャの要素とか入ってこないといいのだけれど。

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