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三毛猫ホームズの推理

三毛猫ホームズの推理

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あらすじ

女子大生の惨殺事件が起きた。

被害者は売春をしていて二人きりになったところを相手に殺されていた。彼女が通っていた女子大の文学部長 森崎は、大学で行われている組織的な売春の調査を警察に依頼し、片山義太郎刑事が派遣された。

片山は森崎の話を聞くため大学に赴き、そこで彼の恋人女子大生 吉塚雪子と知り合う。

夜間、片山が大学構内にあるプレハブ小屋から学生寮を監視していると、雪子の部屋に忍び込もうとする講師を発見し取り押さえた。夜が明け片山がプレハブ小屋に戻ると、室内にあった机や椅子がすべて消えていた。

翌日の朝、そのプレハブ内で森崎が殺されているのが発見される。
小屋は内側から鍵が掛けられ窓も絞められた完全な密室だった。

森崎は校舎新設の業者選定に関する汚職を告発しようとして、恨みを買って殺された可能性があると、雪子は言う。

翌日の夜には学生寮内で女子大生の殺人事件が起き、さらに数日後、寮内で女子大生と片山の上司に当たる刑事も殺された。

大学内の汚職と、売春組織が複雑に絡み合う事件、森崎の飼い猫だった 三毛猫のホームズ が、片山に捜査のヒントを与えていく。

感想

50年近く前の作品だけあって随所に古さは感じさせるが、それでも「王道のエンタテイメント」にまとまっている。
猫が刑事を誘導することの面白さ、派手で大掛かりなトリック、恋愛、黒幕の分からない緊張感などなど、売そうな要素で盛りだくさんだ。

売れる要素の詰め込み方だとか、長期継続シリーズならではの工夫に「コナンっぽさ」も感じた。


①探偵を誘導する子ども/猫
猫のホームズが事件解決のヒント与えて刑事を動かすのは、麻酔銃強行以前「あれれー、おかしーぞー」で小五郎を動かしていたコナンに通じる。


②恋愛要素多め
恋愛要素が入り、ミステリ以外にも訴求ポイントを作っているのも共通している。コナンより若干対象年齢が高そうだが。


③大掛かりなトリック
「本格推理」的なロジックよりも派手さを優先したトリックが使われている。時系列や人物関係を整理しながらじっくり考えるパズラー的な話は、ちょっとマニアックなのかもしれない。


④容疑者は大体3人
コナンでは登場人物は多くても、犯人候補になるのは3人前後のことが多い。(倒叙などは除いて)
本作では2つの事件が平行するので若干複雑だが、それぞれの事件を考えると犯人甲はやはり3人くらいだ。
ここでも「頭を使わせる程度」の調整が図られている。


⑤黒幕探しの緊張感
本作はシリーズ1作目なので、誰がシリーズを通したメインキャラになるのかが分からず、誰もが黒幕であり得る緊張感がある。
キャラクタの位置づけが安定すると安心して読めるけれど、緊迫感では1作目に軍配が上がる。

コナンでは連載を続けてレギュラーキャラが安定してくると、急に素性不明のキャラを投入し緊張感を補強している。
「バーボン編」で登場した、世良真澄、安室透、沖矢昴の3人だとか、「ラム編」で取り上げられている、若狭留美、黒田兵衛、脇田兼則の3人もそうだ。それ以外にもちょこちょこ、レギュラーキャラ入りしている
その分、登場人物が増えすぎて一見さんは入りにくくなっているのだが。

Kindle Unlimitedでシリーズ16作くらいまで読めるようなので、ちょっとずつ読み進めてみよう。


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