三毛猫ホームズの狂死曲
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あらすじ
『三毛猫ホームズ』シリーズの第4作。
片山晴美は、偶然居合わせた桜井マリ宛てのヴァイオリン・コンクール本選進出の電話を受け取り、その直後「命が惜しければ、演奏ミスをしろ!」という脅迫電話も受けてしまう。晴美は刑事である兄の 片山義太郎に相談する。
後日、桜井マリが自宅近くをジョギングしていると、彼女と同じウェアを着ていた女性がナイフで刺される事件が発生し、マリを狙った犯行だと思われた。
コンクール本選の参加者は、新作の譜面を一週間前に渡され、課題曲と一緒に演奏する。外部から新曲解釈へのアドバイスを受けることを避けるため、参加者は本選までの一週間、隔離された建物で合宿し、新作の練習をしながら曲の解釈を探すことになる。
マリの事件もあってコンクール主催者は警察に警護を依頼し、片山義太郎が派遣された。
合宿所には、7人の本選出場者、料理などの世話役と片山の9名が隔離され、一台だけの電話も片山の部屋に置かれ、外部との連絡が経たれていた。
何日目かの夜、地震が発生し盗聴器が仕掛けられているのが発見される。他の人の演奏を聞き解釈を盗もうとする者がいたが、誰の仕業なのか分からない。
またその頃、マリの母親が池に落とされる事件も起きていた。
「マリの実の母親」だという女性が、しばらく前から付きまとっていたため、彼女の犯行と考えられていた。マリの母親は合宿中のマリに動揺を与えるのを怖れ秘密にするよう頼んだが、結局彼女に伝わってしまった。
翌日の夜、合宿所内で女性の死体が発見される。
被害者は「マリの実の母親」だと主張していた女性だった。現場の状況から彼女は屋外で殺され、死後に館内に運ばれていたため、館内にいた者の犯行ではないと思われた。
また、コンクール主催者宅で、コンクールの実務を取り仕切っていた男が死んでいるのが発見される。
さらに館内で世話役の女性が自室で殺されていた。
今回は外部からの侵入はなく、館内部にいた人間の犯行であると考えられた。
コンクールへのプレッシャーと相次ぐ事件のため、合宿の参加者は極度のストレス下に置かれる。ついには自殺を図り戦線離脱する者もあらわれた。
参加者たちの人生をかけたコンクールを無事開催することができるのだろうか。
感想
隔離された合宿所で起こる連続殺人。
かなり緩いクローズドサークルもの。
なんだかんだと毎回、女性といい関係になる片山義太郎は「モテない設定」ながら、実はジェームズ・ボンドばりの色男だ。
今回の桜井マリとのやり取りは特にカッコいい。ラストシーンは感動させられた。
赤川次郎さんは、作品に「教訓めいたもの」を乗せるのが好きではなさそうだが、本作からは「苦しみ悩みながらも一つのものに取り組むことの尊さ」を感じた。