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三毛猫ホームズの追跡

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あらすじ

片山晴美が働くカルチャースクールにサングラスなどで顔を隠した女性が現れ、スクールの全講座に一度に申し込んできた。
あまりに不自然だったため、晴美はその場に居合わせた兄である継承捜査一課刑事 片山義太郎に話をした。

申し込みをした金崎沢子 は偽名で住所や電話番号もデタラメだったことが分かる。その名は数年前に殺された女性のものだった。

片山刑事は、殺された沢子の住んでいたマンションに訪れ、その部屋に住んでいた被害者の妹 金崎涼子 から話を聞く。だがその日の夜、涼子も何者かに殺されてしまう。

カルチャースクールでは申し込み名簿の「金崎沢子」の名をみて、何人かの講師が怯えた様子を見せる。

やがてスクール講師たちが、不可解な死を遂げていく。

感想

作品内での映画評論の講師の言葉が、赤川次郎さんの取り組み姿勢を表しているようで面白い。
「今の若い人たちは、映画でも何でも断片としてしか捉えない。ポッとこう話のタネになるような場面があると満足する。ドラマツルギーなんて関係ない。カッコいい台詞が一つあると、その場面のことしか言わない。あとは見てないも同然だ」

こういう傾向は確かにあるのだろう。
赤川次郎さんは、こういった流れを否定せず、むしろ積極的に乗っいる。
全編を通して長大なドラマを描くより、キャッチーなシーンで受け手側の想像力を煽る方ががウケる、ということを認識している。

赤川次郎さんは「最近の若者は長い物語を解釈する地力がなくなった」と嘆くのではない。
むしろ「キングコングは自然破壊への警鐘」「燃えよドラゴンは機械文明に対する肉体の復権」など、無理やり教訓めいた解釈をする映画評論家を嘲笑している。

細切れがウケるのは「受け手側の理解力低下」ではなく、知識やイメージのストックが増えてきた分、断片からイメージ喚起する能力が高まっているからだ。同じ理由で、くどくどした説明がまどろっこしく感じるのだろう。

赤川次郎さんにそういうセンスがあったからこそ、シリーズ開始1978年から40年たっても古びず新作が出続けているのだろう。今、初期の作品を読んでも物語のテンポに違和感がない。

やっぱりベストセラー量産作家の実力はすごい。

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