作ってあげたい小江戸ごはん2 まんぷくトマトスープと親子の朝ごはん
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あらすじ
『作ってあげたい小江戸ごはん たぬき食堂、はじめました!」に続く、シリーズ第2弾。
小江戸川越の「たぬき食堂」を舞台に、若き店主の信樂大地と看板娘たまきが奮闘する。
- 節東風-まんぷくトマトスープ
大地は「たぬき食堂」で朝食の提供を始めた。
自信をもって提供した「鮭のホイル焼き」だったが、あまり評判にならず、徐々に朝食時間の客足は途絶えていった。
そんな時、大地がかつて修行していた銀座の洋食屋の店主が、たぬき食堂に訪れる。大地の作った鮭のホイル焼きを食べたが「悪くはないがそれだけ」と酷評されてしまった。
一週間後のリベンジをたまきが請け合った。
- 桜湯-ごまねぎポン酢
人気タレントの櫻坂泰河は「からあげ王子」と名乗り、からあげの名店を紹介しながら自らも調理する番組に出演していた。
たまきは、からあげ王子のファンでその番組をこよなく愛していた。
ある日、櫻坂泰河が病気という理由で「からあげ王子コーナー」を休み、思い出の味を求めてたぬき食堂に唐揚げを食べに来ていた。
- 春祭-びっくり焼きおにぎり
たぬき食堂の常連築山は中学生の愛娘が、高校進学を機に離婚した妻と一緒に海外に行くつもりだと思い込む。
最後の思い出として、娘の学園祭での屋台を成功させるため、築山はたまきと大地に協力を依頼した。
- 祝言-えんむすびのサツマイモ
大地の初恋の相手だった岡野理沙子が、たぬき食堂で結婚式後の食事会をしたいといってきた。
理沙子の父親は、結婚相手がサツマイモ農場で働いていることを不満に思い、結婚には反対しているとのことだった。
たまきは、大地のダスティン・ホフマン計画を支援しようと心に誓った。
- 掻餅-ぼた餅とおはぎ
たぬき食堂の定休日、大地が遅くまで寝ているうち、父とたまきは連れ立って母親の墓参りに行っていた。
大地も、母親の好物だった焼き芋を買って墓参りに向かう。
感想
この作者さんの本は読んだ後に心が温かくなる。
本書に出てきた二つのフレーズが特に好きで、温かさを感じるエッセンスがここにあるのかなとも思う。
ひとつめは「幸せは、人が運んでくるものだから」という言葉。
天真爛漫なたまきも、優しく穏やかな大地も、不器用ながら真摯な父も、その他登場人物の誰もが、人と人との関係を大事にしている。
人と一緒にいるのは疲れるし、一人の時間をこよなく愛するけれど、安心感を与えてくれるのは人との繋がりだ。
もう一つ好きなのは「食べることは、生きること。生きることは、たべること」という言葉。
食べることは命と繋がっている。食べることは根源的な喜びなのだと思う。
この作者さんの作品は、とにかく食べ物がおいしそうで、読んでいると食欲がわいてくる。
だいたいは、それほど凝った料理ではなく、素材の良さを活かしたシンプルな料理なのもいい。美味しんぼ的に変にこだわりもなく、素直に食べることを楽しむ姿が力強さを感じさせる。「料理」じゃなく「ごはん」という言葉を使っているのも、優しいストーリーにしっくりと合う。
人とのつながりを大切に、食べることを大切に。