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確率思考 不確かな未来から利益を生みだす

確率思考 不確かな未来から利益を生みだす

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要約

ポーカー競技者である著者の視点で、「賭け型思考」から「質の高い意思決定」を導き出す手法を解説する。

「良い結果」につながったのが「良い意思決定」ではない
良い結果は必ずしも優れた意思決定によるものではないし、悪い結果も100%が間違った意思決定によるものではない。現実には未確認の情報や運の要素が絡んでくる。

例えばチェスや将棋のような競技では、相手の情報はすべて開示され偶然の要素はほとんどない。この場合、意思決定の質と結果は相関するといえる。だが現実世界はこれほど純粋ではない。

現実社会には偶然の要素が色濃く、結果には意思決定だけでなく、その時点で知りえない情報や運の要素が関わってくる。ポーカーや麻雀など、判断と運が両方影響するゲームに近いといえる。

確率的に考えればベターな意思決定だったにもかかわらず、悪い結果となることもあるし、確率的には悪手でも良い結果がでることもある。

だが多くの人は、意志決定の良否を結果から判断してしまう。
ゼロイチで判断するのではなく「80%くらい自信がある」というように、確率的に捉えるべき。

特定の考えに凝り固まっていても自覚するのは難しい。
「じゃあ、掛けてみる」と考えると、一歩引いて客観的に見ることができる。

意思決定に関わる心理的バイアスを認識すべき
自分自身については「上手くいったら自分がすごい、悪い結果は運が悪い」と考え、他人に対しては「上手くいったのは運がいい、悪い結果は自業自得」と考える傾向がある。

自分が上手くいったとしても意思決定が完璧だとは限らない。他人の成功の裏には膨大な努力があったのかもしれない、と謙虚に捉えることが必要。

特に「自分の失敗は自分の責任」と捉えるのには苦痛を伴うが、そこから逃げていては成長しない。

また、頭の良い人ほど「補強思考」の能力が高い。自分で納得のいく因果関係を作りだしてしまうため、どのような結果でも意思決定が「正しかった」ことを補強する材料としてしまう。

心理バイアスを取り除くことはできないが、バイアスがあることを認識し、できる限り客観的な「探求思考」に向かう必要がある。

成功/失敗したのが、意思決定の質によるものなのか運によるものなのか、その比率はどの程度なのかが重要な情報となる。

複数の意見の対立がより質の高い意思決定に繋がる
一人だけの考えでは、心理的バイアスがかって偏ってしまう。同質の考えを持つ人を集めても、お互いの思考を補強しあい、かえって偏りを強めてしまう。

属性の異なる人や反対意見を持っている人を意図的に取り入れ、人格から切り離した純粋な情報として判断していくことが、より高い意思決定に繋がる。

未来の時間軸から捉える

1年後に100万円もらえるより、今日87万円をもらうことを選ぶ人は多いだろう。将来の利益が割り引かれるのは当然だが、白黒の判断では割引率が合理的な範囲を超えがちだ。「賭け型思考」で確率を取り入れて考えることで、合理的な判断をすることができる。

将来の成功イメージから逆算する「バックキャスティング」や、将来の失敗イメージから問題点を潰していく「事前検死」の考え方を紹介している。

感想

チェスや将棋のようにできるだけ運の要素を排した論理ゲームも面白いが、未知の情報や運をどう扱うかが重要になるポーカーや麻雀も得るものが多いゲームだと思う。個人的には将棋より麻雀が好きだ。

例えば麻雀初心者のうちは、何でもかんでもが「運」によるものにみえる。筋も読めない段階では、捨て牌が相手のアタリ牌になるかどうかは、ほぼすべてが運の結果だろう。
経験を重ねて、相手の捨て牌、残り牌の状況など、拾える情報が増えてくると、運に支配される比率が下がってくる。
完全に運の要素が排除することはできないが、運任せの比率を下げることで、確実に勝率が上がっていく。

短期的な結果に着目して「上手くいったから良い判断だった」と捉えるだけではだめで、意思決定の質を高めるためには、短期的な結果に一喜一憂せず、長期的な確率的に考える必要がある。


また、上手くいかないとき、自分に責任があると考え謙虚に対策を練ることが成長につながるのだということも、よく分かってはいるが耳が痛い。

わりと完璧主義の傾向がある自分は、まさに本書の悪例にあてはまっている。
上手くいったときの筋道を追うのは楽しいが、それは特定のやり方を補強するだけで意思決定の質を高めてはいない。
一方失敗したときは、振り返ること自体が嫌になり目を背けてしまう。これでは成長することはないだろう。

どんなことでも最初のうちは器用に学んである程度のレベルになるが、上達に壁があってそこから上に行けないのは、できないところを直視する勇気がないからなのだ。

「成功・失敗」に振り回されるマインドセットから「成功からも失敗からも学び成長することに喜びを感じる」マインドセットに変えていくことが必要なのだろう。

本書で直接指摘している内容ではないが、確率を含めた意思決定が有益になるには試行回数の多さも重要なのだと思っている。

数回の挑戦であれば偏りが出て「運」に翻弄される。
試行回数が増えれば大数の法則に従い、確率的な意志決定が意味を持ち始める。
良い結果に慢心せず、悪い結果に負けず、挑戦を重ねることで、「運」を「確率」に変えて、コントロール範囲を広げることができるのだ。




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