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ムカシ×ムカシ REMINISCENCE

ムカシ×ムカシ REMINISCENCE

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あらすじ

Xシリーズ第4弾。

資産家の百目鬼悦造とその妻 多喜が殺害された。

遺産相続のため収蔵している美術品の鑑定が、SYアート&リサーチに依頼された。社長の椙田は高価な美術品の鑑定を行い、助手の小川令子、バイトの真鍋瞬市、永田絵里子たちは百目鬼家でリスト作成などの作業に勤しんでいた。

百目鬼悦造の娘である君坂妙子とその夫 靖司が屋敷に顔を出すことはなく、弁護士の内藤が小川たちの窓口となっていた。妙子たちの娘で悦造の孫でもあり、作家を目指している君坂一葉 は何度か屋敷に訪れ小川たちと話をしていた。
君坂一葉は同人作家として小説を書いていたが、今のところ大きく売れることはなかった。

小川たちが鑑定作業のため百目鬼家を訪れていたある日、敷地内の古井戸から死体が発見される。後の調査で死んでいたのは 悦造の甥であったことが分かる。

弁護士の内藤により、悦造は遺産を孫娘の君坂一葉に相続させようと遺言状を作っていたが、その準備が整う前に殺されたということが明かされる。

その遺言状が遺言状が有効になると遺産を相続できなくなる君坂夫婦が、その阻止のため百目鬼悦造を殺し、遺産が流れる可能性のある甥の上野も殺したのではないかと、警察は容疑をかけていた。

だが数日後、君坂妙子も何者かに殺害されてしまう。
頭の部分に皿を載せられ、内側から施錠された密室内での殺人だった。
妙子の死で遺産を相続することになった夫の靖司には、事件当時完全なアリバイがあり犯行は不可能だった。

頭に皿を乗せられた被害者の状況から、小川たちは君坂一葉から見せられた「河童の絵」を思い出す。
その絵は、君坂一葉の曾祖母にあたる百目一葉の手によるものだった。百目一葉は、大正の一葉として明治の樋口一葉と並び称されるくらいの著名作家だった。
その絵には「ぶすになるべからず。すすみとげて金を得る」という不可思議な一文が添えられていた。

遺産相続のトラブルであれば、君坂一葉が次に狙われる可能性があると考えた小川は、警察に護衛を依頼する。
だが君坂一葉は、遺産相続を一切拒否し、最新作を小川に託して姿を消してしまった。

ネタバレ感想

*ネタバレ要素があるので未読の方はご注意ください。

密室とかも出てくるけど完全スルー。潔くて気持ちいい。
「アリバイなんてどうにか崩すんでしょう」「密室なんてどうせ破られるんでしょう」という斜に構えたミステリ読者をぶった斬ってきた。

本作は犯行方法を問う How Done It ではなく、動機を問う Why Done It のミステリだということだ。
そしてその Why が切ない。


森博嗣氏は、「文学の世界で『若い女性』というのは、それだけでプレミアがつく」と、わりと露骨に登場人物に語らせている。

個人的には、文学の世界で「若い女性」がそれほど強いわけじゃないと感じている。40代のオッサンと10代の女性では、感性も違ってくるし、どちらも需要がある。小説や漫画の作家を目指す女子は相当数いるし、希少性の面でも女子の方が有利とはいえないだろう。

本書出版の少し前、綿矢りささんや金原ひとみさんなど、若い女性が文学賞をとっている。実際に読んでみると、完成度が高いし、ものすごく読みやすくておもしろい。間違いなくちゃんと内容で判断されている。

だけれども、当人たちがどう感じるかは、また別問題だ。
「自分が成功しないのは オッサンだからで、若い女性は最初から有利」と考えているオッサンは、実際に妬みの対象とするだろう。
自分が「若い女性」であることを積極的に利用していたのであれば、後から「より若く美しい女性」が追いかけてくれば、それ以外のアイデンティティを渇望するのかもしれない。

コントロールできない「与えられた条件=運」から逃れることはできない。
でもコントロールできる部分を最大化することで、相対的に「運」の影響を最小化することはできる。

その苦しさに耐えられなかったゆえの不幸が、本作の Why だ。


いやまあ、YouTubeとかTik Tokとかの 動画コンテンツで「ビジュアル的にむさ苦しいオッサンを見たくねぇ! 」というのはちょっと違う話。

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