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最強の教養 不確実性超入門

最強の教養 不確実性超入門

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要約

成功は「将来を正確に予測すること」ではなく「不確実性にどう備え対処するか」が重要であると説く。

  • 予測不可能性

「日本の20年後の高齢者比率」などかなりの確度で予測できる事項と、株価や為替の動きなど予測が難しい事項がある。

19世紀フランスのラプラスは「初期条件と運動法則が分かれば、将来のできごとを完全に予測できる」という決定論を唱えたが、20世紀に入り量子力学の観点から「世界の根本には完全なランダム性が存在する」と考えられるようになってきている。

  • ランダム性による正規分布

サイコロの目や身長の分布のように、ランダムな出来事でも相互の影響が少ないものは「正規分布」に従う。

正規分布に従うランダムな出来事は一回ごとの結果を予測することはできないが、平均値と標準偏差が分かれば確率的に予測を立てることができる

ランダムな出来事への対処は、最悪の事態として「どの程度の最悪」を想定することが重要。「一撃で死なない」範囲で、再挑戦の体力を残すのが鉄則。

  • フィードバックによるべき分布

株価の動きや、個人の収入などでは、正規分布ではめったに起こらないはずの極端な状況が、わりと高頻度で発生する。

これは「要素同士が相互フィードバックすることで、より極端な方向に向かう」ことが原因。この場合は正規分布ではなく「べき分布」となる。

フィードバックには、結果を増幅する「自己増幅的フィードバック」と、抑制する「自己抑制的フィードバック」がある

自己増幅的フィードバックは、例えば「株価が下がったのをみて、企業価値が下がったと考えた人が株を売り、株価がさらに下がる」ようなケースでみられる。
自己抑制的フィードバックは、逆に「株価が下がって買い時だと感じた人が株を買い、株価が回復する」ようなケースで現れる。

フィードバックではごく小さな要素の影響が増幅されていくので、どちらに振れるかを予測することは不可能。正規分布によるランダム性より、予測の難易度は更に高いといえる。

  • バブルの発生

フィードバックの連鎖が「バブル」とその崩壊を引き起こすことがある。

例えばリーマンショックは、サブプライムローンを組み込んだ債権の崩壊が原因だと言われているが、原因に対して結果の方がずっと大きくなっている。

2007年当時サブプライムローン全体の残高でも1.3兆ドル程度で、そのすべてが債権化されたわけではない。
だがその影響は大きく、米国政府として動かした金額だけでも8.3兆ドルを超え、米国内の主要金融関連企業の損失を加えると10兆ドル以上となる。
米国外や、金融企業以外は試算するのも難しいが、相当の規模だったことは間違いない。

バブルの発生は、ランダム性とフィードバックによる強化によるものなので、予測することはできない。
しかし、ネットワークの発達とグローバライゼーションの進展で、より大規模なバブルがより高速に拡大していく条件は整っているといえる。

  • 心理バイアス

人は予測不可能であることを怖れ、強引にでも因果関係付け」をして安心しようとする心理バイアスを持つ

個々人にバイアスがかかるだけでなく、大多数の人が傾向的に同じバイアスを持っているので、影響されていることに気づきにくい

不確実性を過小評価することでが失敗の原因となることがある。
例えば、成功体験に繋がった因果関係を一般化してしまったり、これまでの投資と今後の計画の因果関係を切り離せずサンクコストを捨てられないなど。

不確実性が関わる部分では、成功でなく失敗に学ぶこと。
フィードバックによる「同調の強化」に流れないよう、異なる視点を積極的に取り入れていくことも重要

  • 長期的成功に導く思考法

「予測は外れて当たり前」だと考えて対処する必要がある
そして「正しいやり方」の効果は長期的にしか現れない

一回一回の勝負にこだわって、リスクを取り除くことばかり考えていると、長期的な勝率を下げることになる。

「即死」しない範囲で、小さな失敗を許容していくことが重要。

感想

動き始めるには予測を立てて仮にでもそこに向かって進むしかない。
だが予測は当たらないのが当然。

とにかく「正のフィードバック」が生じるまで、根気よく手数をうっていくこと。リスクは取るべきだが「一撃で死なない」ことだけには注意することが大事だ。

何が当たるのか事前に予測することは不可能なのだから、例えば投資であるなら、株なのか預金なのか債権なのか為替なのか、とにかく幅を広げ手数を増やしていくことがまず必要なのだろう。
一方、予測を外したら生活が成り立たなくなるまで、限界一杯に投資してはいけない。予測は外れるものと考え、撤退しても再挑戦できる余地は持っておくべきだ。

仕事でも応用はできる。
失敗はするものと考えてとにかく手数を打ってみる。
会社の金を着服するとか、信頼を失って一発退場となるような手段は避けるべきだが、致命傷でなければ再挑戦し続けることができる。

挑戦を繰り返すうち、自分にとっての良い状況を「自己増幅的フィードバック」に乗ることができれば大成功だといえるだろう。

極めて実践的で示唆の多い本だった。
最近読んだ確率思考や、心理バイアスについての本の集大成的な感じ。

現在 Kindle Unlimited の読み放題対象になっているので、サービスに加入している方にはぜひ試して欲しい。

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