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朝が来る

ネタバレ感想『朝が来る』

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あらすじ

産みの母と育ての母、「朝斗」の二人の母の物語。

栗原佐都子と清和の夫婦は40歳手前で不妊治療に取り組んだが、子どもに恵まれなかった。両親や周囲のプレッシャーに苦しみながら、一度は子どもを諦めたが、「ベビーバトン」という養子縁組を仲介する団体を知り、その熱心な活動に心を打たれ、養子を受け入れた。

朝斗と名付けられた男の子は、養父母の愛情を受け真っ直ぐに育つ。
「幼稚園で朝斗が友だちに怪我をさせた」と聞いた時も、佐都子は「ぼくはやってない」という朝斗の言葉を信じた。母息子は強い信頼で結ばれ、佐都子は幸せをかみしめていた。

そんなとき、朝斗の産みの親「片倉ひかり」だと名乗る女性が、栗原家に現れる。

彼女は「朝斗を返して欲しい。できないならお金が欲しい」といい、要求をのまないなら、朝斗本人や周囲に「養子であることを言いふらす」と脅迫した。
佐都子は「周囲に養子であることを話しているし、朝斗本人にも産みのお母さんが別にいることを伝えている。脅迫にならない」と拒絶した。
養子を引き受けるときに一度会った片倉ひかりと、訪れた女性の印象があまりに違ったため、彼女は偽物だと考え、追い払ってしまう。


後半、片倉ひかりの半生に舞台が移る。

ひかりの両親は父母ともに教師だった。娘本人より外面を気にする、おためごかしに苛立ちを感じていた、

中学に入ってイケメン男子に告白され、ひかりは「生真面目で堅苦しい人生」から抜け出せると感じた。やがて彼と肉体関係を持って妊娠し、気付いた時には中絶が不可能な段階に入っていた。

両親はひかりを養子縁組仲介の「ベビーバトン」に預け、周囲に知られないよう出産し、赤ちゃんを養子として差し出した。

産みの親が養父母に会うことは避けるべきだと言われていたが、ひかりは強く希望して養父母となる栗原夫婦と面会した。ひかりは「ごめんなさい。ありがとうございます。この子をよろしくお願いします」と言い、赤ちゃんを手放す。
栗原夫妻はひかりに「この子を朝斗と名付けます」と伝えた。

出産を終え中学に戻ったひかりだが、彼氏からは冷たくあしらわれてしまう。
高校生になったひかりは、両親や親戚の態度に不満を募らせ家出する。

家出したひかりは「ベビーバトン」に身を寄せるが、ベビーバトン自体が活動を終えた。ひかりは紹介を受け住み込みで新聞配達の仕事をするようになった。
新聞配達の同僚から、偽造書面で借金の保証人にされたひかりは、借金取りに追われ逃げ出してしまう。

逃げ続けた苦境に立たされたひかりは、朝斗の養父母である栗原家からお金を取ることを計画した。

感想

後半の片倉ひかりの人生が重たい。
感情移入し過ぎて、追いつめられた状況に息苦しさを感じてしまった。

面倒なことからは逃げ出したい。
意に添わない他人にはムカつく。
脅迫相手への手土産に悩んで右往左往する。

根本は優しく感受性豊かだけど、不器用で周囲に流され追い詰められてしまう。
年齢設定も性別も自分とは違うが、心情はとてもよく理解できる。

追い詰められた彼女の最後の救いとなったのは、子どもへの強い思いだった。

やはり人生において決定的に重要なのは「人とのつながり」だ。
血縁や家族の形が重要なのではなく、その中で信頼関係を築くことが大事なのだ。

苦しみながらも、夫や子どもを理解し信頼しようとしてきた佐都子は、ゆっくりと幸せをつかんだ。
家族や周囲の人間から逃げ続けたひかりは、助けを得られず追いつめられてしまう。それでも最後に救われたのは、実子への思いがあったから。

「ひとは一人では生きられない」ということなのだろう。

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