涼宮ハルヒの退屈
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あらすじ
「涼宮ハルヒ」シリーズ第3弾。
『涼宮ハルヒの憂鬱』と『涼宮ハルヒの退屈』の間、夏ごろのお話。
今回は短編集。
- 涼宮ハルヒの退屈
退屈を嫌う涼宮ハルヒは、SOS団としてアマチュア野球大会に出場することを決める。
一回戦負けを目論むキョンは、小学生の妹を参加させるなど策を練る。
だが「ハルヒの不機嫌がもたらす悪影響」を怖れたSOS団員は、結局本気を出し、主に長門有希の力で、強豪チームを打ち破った。
- 笹の葉ラプソディ
7月7日七夕の日、ハルヒはSOS団員に短冊に願いを書くことを強要する。
16光年以上離れたアルタイルと25光年離れたベガに願いが届くよう、遠い将来の願いを書き込んだ。
その夜、朝比奈みくるはキョンを誘い出し、3年前の七夕の夜に時間遡行した。
3年前の世界に着くと高校生の朝日奈は眠ってしまった。そこでは大人になった朝日奈が待っていて、キョンに「学校へ行って、そこにいる人の手伝いをするように」と命じた。
学校には、中学生の涼宮ハルヒがいて、校庭に宇宙人へのメッセージを書こうとしていた。
大人の朝日奈に命じられたキョンは、ハルヒを手伝う。
「宇宙人はいると思うか?」というハルヒの問いかけに、キョンは「宇宙人も未来人も超能力者もいると思う」と答えた。
目覚めた高校生の朝日奈は、時間移動するための道具を紛失していることに気づく。二人は3年前の長門に助けを求めた。
3年前も今と変わらない長門は二人の話を即座に理解した。
二人のいる部屋の時間を止めて、3年後の七夕の夜に時間を戻すことで、二人を元の時間に送り届けた。
- ミステリックサイン
SOS団の部室に、2年生の女子が訪れ「行方不明になった彼氏を探して欲しい」という依頼される。
失踪したコンピュータ部の部長の家を訪れると、そこには「閉鎖空間」があり、巨大なカマドウマが鎮座していた。古泉たちの攻撃でカマドウマはあえなく消滅し、部長は無事戻ってきた。
このカマドウマは「情報集積体」で、コンピュータネットワークを依代に半覚醒の状態を保っていた。だが、涼宮ハルヒがアップロードしたSOS団エンブレムが偶然持っていた情報量に触発され、完全に覚醒したものだった。
- 孤島症候群
SOS団は夏休みの合宿で「孤島」に向かった。
嵐の影響で島は本土との交通が閉ざされ、絶好の「クローズドサークル」が出来上がる。
執事とメイド、館の主人とその弟と共に閉ざされた館で夜を過ごすSOS団。
彼らは翌朝、鍵の閉ざされた密室で胸にナイフを刺し倒れた主人を発見する。
「クローズドサークル」での「密室殺人事件」という完璧なシチュエーションで、ハルヒは探偵役に挑む。
感想
長門は「無矛盾な公理的集合論は自己そのものの無矛盾性を証明することはできないから」と不完全性定理に言及している。
数学的な話は置いておくとしても「どんなに完璧に見える世界でも、土台がひっくり返される可能性は排除できない」というのは理解できる。
遠い昔「胡蝶の夢」の頃から「現実が足元からひっくり返されてしまう恐ろしさ」は普遍的なテーマだったのだろう。
涼宮ハルヒシリーズも、学園青春もののベースにある「現実が侵食される不安感」が深みを増しているのだと感じた。
イーロン・マスクの言う通り「私たちが今見ている世界が、最も根源的な基底世界である可能性よりは、何層か上の仮想現実であると考える方が自然」なのかもしれない。