いつまでもショパン
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あらすじ
『さよならドビュッシー』から始まる岬洋介シリーズ第3弾。
ポーランドで行われるショパン・コンクールを舞台にした音楽と暴力の闘いを描く物語。
仕掛けられた爆弾でポーランド大統領専用機が墜落する。
爆弾作りの癖から「ピアニスト」と呼ばれるテロリストの犯行だと目されていた。
「ピアニスト」の捜査に当たっていた刑事がショパン・コンクール会場の控室で殺害された。心臓を撃ち抜かれ、なぜか遺体の指が10本とも切り落とされていた。
控室に侵入可能だったコンクールの会場関係者、審査員、コンテスト出場者たちが容疑者とされ、取り調べを受ける。
ポーランド音楽名門ステファンス家の ヤン・ステファンスは、父ヴィトルドからピアノの英才教育を受けてきた。
ショパン・コンクールの審査員長にもなったアダム・カミンスキに師事し、ついに本選出場を果たす。
ヤンは、伝統的な「ポーランドのショパン」を大切にし、ロシア、アメリカ、アジア各国からのコンテスタントを軽く見ていたが、実際の演奏を聴き心を動かされた。
コンテスト参加者の岬洋介との会話で、ヤンは自分が追いかけていたものが何だったのか見失っていく。
テロリストの攻撃は続く。
別のコンサート会場でも爆破が起こり、ショパン・コンクールの参加者も犠牲になる。
犯人である「ピアニスト」に捜査の手を伸ばした刑事も返り討ちにあった。
さらには公園に仕掛けた爆弾が大勢の命を奪った。
ヤンと岬の知り合いだった少女マリ―も爆弾の犠牲となってしまった。
恐怖が広がる中、審査員長のカミンスキは「暴力に屈しない」ことを表明し、コンクールを最後まで行った。
コンテスタントたちはそれぞれのショパンを紡ぎ出す。
感想
シリーズの前2作でも音楽描写が力強く作品のキーになっていたが、本作ではさらに攻撃的だ。圧倒的な密度でショパンの音楽が語られる。
クラシックピアノには興味なかったのに、岬洋介シリーズを読んでから聴き始めるようになった。本作もショパンを聞きながら読破。
本作に登場した盲目のピアニスト 榊場隆平のモデルになったと思われる 辻井伸行のショパンを聴いたが、頬を殴られるような衝撃を受けた。
力んだ感じがなく柔らかいのに、音の粒一つ一つにも曲全体にも、一本の芯が通っている。エチュード10-12とかは鳥肌が立った。人間の手って指は10本しかなかったはずなのだが「マジすか、これ。。」という感じ。
ピアノというのがこれほど表現力豊かな楽器なのだと、あらためて思い知らされた。
ピアノの力でテロリストと闘う描写や、暴力の犠牲となった少女への追悼に宿る力の表現が、普通なら過剰に感じられるくらいなのだが、実際に「ノクターン」を聴きながら読むと反則レベルで心にしみる。完全に持って行かれた
絶対にショパンを聴きながら読むべき作品だ。