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スコッチ・ゲーム

スコッチ・ゲーム

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あらすじ

高校3年生の高瀬千帆は、同性の恋人の鞆呂木恵が、男性教諭の惟道と関係を持ったと疑い、喧嘩をしてしまう。
恵は「疑いが晴れないなら、惟道を殺して、自分も死ぬ」といった。

卒業を控えた2月のある夜、千帆が女子寮に戻ると恵は何者かに殺されていた。
動機のあった千帆も容疑者となるが体格差などから疑いは晴れた。

千帆は恵を殺した相手を突き止めるため、担当刑事から情報を集め、女子寮にいた生徒たちからも話を聞いていった。

その2日後、隣室の生徒も殺されてしまう。
恵を殺した犯人の後ろ姿を見たという柚月あゆみが外出している最中、あゆみと同室の能馬さゆりが殺されていた。

千帆は教師の惟道を疑う。
彼は千帆に執着していた。かつて千帆は、惟道にストーキングされ、逃れて入った書店で「万引き冤罪」をでっち上げられていた。彼女に接近するため、なりふり構わない行動をとる惟道に、警戒感を持ち続けていた。

千帆は地元で進学する予定だったが、父の勧めもあり、事件のあった場所を離れ遠方の安槻大学を受験した。

3月に入り、千帆は一時的に地元に戻る。

2つの事件の犯人として惟道を疑っていた千帆は、かつての「万引き冤罪」の際に惟道に協力者がいたはずだと考え、その書店まで当時の状況を探りにいった。
当時、千帆を捕まえた大島という女性店員はすでに退職していて、もう一人関っていた男性店員の木戸から、大島の住所を聞き出した。
千帆は木戸を待っている間、そこにも惟道が姿を現していた。

その翌日、書店店員だった大島が、幼い子供と一緒に殺されているのが発見される。

さらに数日後、高校で終業式のあった日、女子寮に住んでいた2年生の鳥羽田冴子が殺される。
恵に借りていた本を返しに、彼女の実家から出てきたところを、背後から刺され死んでしまった。

3件の女子高生殺人事件について、警察も惟道を疑っていたが彼は奇妙なアリバイを主張した。
「スコッチの匂いをさせる、フードをまぶかに被って顔の分からない人間とぶつかった。その人は川に向かい、瓶の中身を川に捨て川の水で瓶を洗っていた」のだという。

警察は最終的にその人物を探り当て、少なくとも最初の事件について惟道のアリバイは証明された。

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事件から2年後、千帆は大学の友人、匠千暁、辺見祐輔、羽迫由起子たちと飲んでいる時、この事件を話題に挙げた。

詳細は省き「スコッチの匂いをさせ、川に瓶の中身を捨てた人物は、何を目的としていたのか」を当てるゲームとして話す。

感想

シリーズものだと気付かず本作から読んでしまった。
「匠千暁シリーズ」面白い!

複雑な伏線の鮮やかな回収と「全部を語らない語り手」が好きだ。

そしてそれ以上に、匠千暁の言葉に共感してしまう。

ものを持たない千暁は「何かを所有すると管理義務が生じる。それが面倒」だという。
そして人間関係でも、相互に「管理義務」が生じない距離感を保っている。「他人の人生にまで責任が持てると思うのは、非常に傲慢な発想」だと言って。

この距離感が心地よい。

「人生を因果関係で説明することは無意味」だし、「確率論で傾向を語る」のも、結局「n=1」の人生において本人以外に意味はない。
自分の人生には自分で責任を持つしかない。

このシリーズをもっと読んでみよう。

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