失恋の準備をお願いします
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「ごめんなさい、私、本当は魔法使いだったの。。」
荒唐無稽な断り文句から始まる6つの恋愛物語。
笑わせる話の中に「胸キュン」エピソードが散りばめられた「王道のラブコメ」に、ミステリ仕込みの「こねくり回したプロット」が加わって、面白い味を出している。
笑って、泣いて、最後に爽快感を覚える。
小説を読む楽しさってこういうことだと、あらためて思い出させてくれた。
あらすじ
全6話の連作短編形式のラブコメディ。
ランドアバウト(環状交差点)を巡る車のように、「日の下町」ですれ違う5つの恋愛が描かれる。
最終話では、ミステリ作家の本領発揮で、張りめぐらされた伏線が一気に回収され、それぞれの出口へと向かっていく。
- 第一話 上京間近のウィッチクラフト
女子高生の満作千代子は同じ予備校に通う日輪から告白された。
告白されたことは嬉しいが、まもなく上京し遠距離恋愛になってしまうことを不安に感じて断ることを決意する。
告白の方法が思いつかない千代子は、近所の幼稚園児リサと見ていた「魔法少女アニメ」にインスパイアされ、「実は私は魔法使いだった」設定で断ろうとする。
リサが幼稚園の友達「ななむー」から教わった手品も織り交ぜ、千代子は日輪を説得した。
- 第二話 真偽不明のフラーテーション
男子高校生の賢二は漆原博士から、嘘発見機能付き市松人形「小百合」をもらった。
学校に行った賢二は男女が喧嘩している現場に遭遇する。
女生徒の千鳥翔子は彼氏である菊池正が、同じ学校の槿紗也加と浮気をしたのだと責めていた。翔子は「正と槿がラブホテルに入るのを見た」のだと言うが、正は「浮気はしていない」と言い張る。
どちらの言い分が本当なのか、賢二は小百合の嘘発見機能を使って謎を解こうとした。
- 第三話 不可抗力のレディーキラー
女子高生、梅木鶴子(梅子)のクラスに転校してきた蕗俊太郎(蕗太郎)は尋常じゃなくモテた。
クラス女子のほぼ全員が蕗太郎に夢中になる。
ただ一人蕗太郎に興味を持たなかった梅子は蕗太郎から相談を受けた。
相談のために入ったファミレスでも、蕗太郎はウェイトレスから惚れられ、一緒にいた梅子のグラスには毒が入れられるくらいだった。
蕗太郎曰く「なぜかモテてしまうが理由がわからない。あまりにもモテすぎるのは苦痛だ」という。ふざけないで欲しい。
梅子は知り合いの漆原博士に相談し、蕗太郎が異様にモテる理由を調べてもらった。
- 第四話 寡黙少女のオフェンスレポート
小学生男子の折尾は、ボールペン泥棒の疑いを受けた女子、芙蓉をかばった。
芙蓉は折尾にお礼をいうが、実は犯人は芙蓉だった。
その後も芙蓉は学校で盗みを続けたが、折尾に説得され盗むことを止めた。
芙蓉の母親は亡くなり、市松人形職人である父は全く話をしない。「道徳」を教えられることなく育った芙蓉は考えなしに盗んでいたが、きちんと話を聞いてくれる折尾に出会い「もう盗まない」と約束する。
だが数日後、折尾が見たいといっていた「60億円相当の猫の置物」を、彼のために盗んできたのだといった。
- 第五話 勤勉社員のアウトレイジ
田中マヨネーズ社の営業マン薮田真澄は「困っている人を見かけたら手当たり次第に助けてあげないと頭がガンガン痛んで身体中のものを全部吐き出しそうになっちゃうくらいおせっかいな」奈々子に声をかけられる。
薮田はブラックな田中マヨネーズ社を辞めたいと考え、辞職に追い込まれるよう意図的に「不祥事」を起こしてきたが、どれもが逆効果になり、結果より重い責任を負うことになっていた。
奈々子は薮田の相談を受け、彼と一緒に田中マヨネーズ退職のための作戦を立てていった。
- 第六話 失恋覚悟のランドアバウト
5組のカップルの恋愛がランドアバウト(循環交差点)のように重なり、すれ違い、それぞれの出口に向かう。
バラバラだった話が、収束し分散していく。