BookLetでは、ビジネス書や小説の1000文字程度のオリジナルレビューを掲載しています。

メモ活

人は「忘れるようにできている」から。『メモ活』

こちらで購入可能

「毎月1冊本を書いている」という上阪徹さん、自身の著書だけでなく、インタビュー記事を手がけたり、人の話を聞いて本に起こす「ブックライター」の仕事も手がけ、とにかく大量の仕事を抱えている。

それでも「かつて一度も締め切りを破ったことがない」のだと言います。
本書は、超ハイスピードで仕事をこなす上坂氏がその仕事の秘訣「メモ」について解説する本です。

多くのポイントがあるのですが、ここでは3点に絞って解説してきたいと思います。
興味を持たれましたら、ぜひ本を手に取ってご一読いただけることをお勧めします。

1.人間は「忘れるようにできている」

「人間は必ず忘れる。覚えていることができない。なぜなら、忘れる生き物だからだ」という言葉を紹介しています。
今人間は、都市で外敵から守られ、大量の情報に囲まれて生きています。でも、このような暮らしは、人類の長い歴史を考えると「つい最近」始まったものです。

それまで、例えば肉食動物がウヨウヨしているジャングルで暮らしていた人間は、一つのことに集中しすぎず、常に脳にスペースを空けて、危険をすぐに察知する余裕を持つことが必要でした。

忘れてしまうこと、集中力が散漫になってしまうことは、人間の進化の過程を考えると必然的だったのです。

ニュートンのように「超集中力」 を持っていた人間もいるけれど、もし彼がジャングルにいたら、あっという間にライオンに食べられていたでしょう。

今では、周囲への注意を怠ったからといって、すぐにライオンに食べられてしまうわけではありませんが、人間の脳の仕組みはその頃から大きくは変わっていません。
一方で、こんにち、私たちを取り囲む情報の量は急激に増えています。

だからこそ、脳のスペースを積極的に空けるため「メモ」で記憶を外に出すことが有効なのです。

また同時に、外に出すことで記憶を客観視することができ、組み合わせて新しいものを作り出すなど、発想力の向上にもつながります。

世の中にはノイマンのように「膨大な脳内メモリ容量」を持つ天才もいますが、私たちのような凡人にとっては、道具の力を借りる必要があるのです。

「とにかくなんでもメモに残す」ことから始めてみましょう。

2.「メモの取り方」

作者はスケジュール帳用と、仕事メモ用として「A4サイズのノート」をそれぞれ一冊準備することを勧めています。
大きめの紙面に余裕を持って書くことで、見返した時にも読みやすく、一まとまりの内容を見渡すことができるからです。

スケジュールの立て方について、とくに参考になったのは「アポイントや会議など他人と関わる予定」だけではなく「自分自身の作業時間」も予定に組み込んでおくということ。
これは上坂氏の指摘通りで、集中作業をする時間は意識して確保しないとなくなってしまいますね。

作者はスマホのメーラーの下書きをメモ代わりに使ったりもしていますが、基本的には「手書きのメモ」を勧めています。
その理由として、パソコンやスマホでメモを取ることが年配層には印象が悪いこと、手書きの方が手軽で速いこと、手で書くことで記憶が定着しやすいこと、といったことを挙げています。

個人的な感想として、データの検索性やチームでの共有を考えると、さすがに手書きにこだわるのは難しくなってきているとは思いますが。。

3.発想力を加速し文章力を向上させる「攻めのメモ」

アイデアというのはデスクで考えているときよりも、真剣に考えたあとにリラックスして「脳が油断しているとき」に、ふと外に溢れて来るもの。
だからこそ、常にメモを準備して、ひらめきの瞬間を逃さないことが大切なのです。

夢を100個書いてみる」ことも勧めています。
「夢や目標は実は知識だ」という言葉の通り、知らないことは夢に見ることもできません。夢を100個書こうとすると、自分には知識がないことに気づく。それなら、上の世界のことを知ろうとすればいいのです。

ブックライターとしての経験から、文章力向上にもメモが役立つことを説きます。

「立派な文章」を目指すと筆が進みませんが、文章は「素材」があれば書けるものなのです。
文章の素材とは「事実、数字、エピソード」この3つがあれば文章は書けます。そして素材集めに役立つのが「メモ」なのです。

例えば「当社はいい会社です」という表現は拙く感じる。
「いい会社」を、「素晴らしい会社」や「立派な会社」に言い換えるなど、形容詞にこだわってしまうと、時間がかかる割にインパクトが弱い。
そこは「事実、数字、エピソード」を使う方がいい。
例えば「5年間誰も辞めていない」「社長が誕生日に社員の家族に花を贈っている」とか「10年間ずっと右肩上がりの成長を続けている」など。
こういう素材をそのまま書くだけで、十分に「いい会社」であることが伝わります。

文章を書く段階ではなく、その前の素材集めに時間を使うべきで、良い素材が揃えば良い文章を書くことは難しくありません。

大量の文章をコンスタントに生み出してきた、アイデア発想力と文章力の一端をみた気がします。

こちらで購入可能

コメント