連続殺人鬼カエル男ふたたび

あらすじ

『連続殺人鬼カエル男』の続編。

カエル男の五十音順殺人で、名前が「あ」で始まる人から「え」まで始まる人まで、4人が殺されていた。

今作は「お」から事件は始まる。
前作で「カエル男」として逮捕された「当真勝雄（トウマ・カツオ）」と「有働さゆり（ウドウ・サユリ）」を担当していた精神科医「御前崎宗孝（オマエザキ・ムネタカ）」の自宅が爆破された。
現場には「カエル男」のメッセージが残されていた。

御前崎は娘と孫を殺され、その犯人が精神障害の詐病で罪を逃れたことから、犯人や弁護士を恨み、有働や当真を使って復讐しようとしていたのが、前回の「カエル男」事件の真相だった。

今回の事件現場には当真の痕跡があった。警察の古手川たちはこれが、新たな「カエル男」事件だと判断した。


次に被害者は「さ行」に移る。
「佐藤尚久（サトウ・ナオヒサ）」が工場内の硫酸プールで首から下を溶かされ死んでいた。
当初は不注意による事故だと思われたが、翌日になって現場に「カエル男」のメッセージが見つかる。「こんどは　さ　からはじめよう」

佐藤はブラック会社で派遣社員として働いていた。劣悪な環境で働かされている外国人労働者の味方となり、会社側とは何度も衝突していた。
古手川たちは行方が分からなくなった当真を追う。

駅のホームに「志保美純（シホミ・ジュン）」が転落し轢死した。

スマホを見ながら不注意で転落した事故だと思われたが、ここでも「カエル男」の犯行声明文が見つかる。

前回の「カエル男」事件は飯能市内に限定されていたが、今回は埼玉・千葉から東京まで現場が広がり、各県警と警視庁との連携でも困難を極めた。


前回の「カエル男」事件のきっかけとなった母子殺人事件の犯人「古沢冬樹（フルサワ・フユキ）は、精神鑑定の結果心神喪失と判断され、医療刑務所に収監されていたが、近く出所するという情報が流れてきた。
新聞記者の「尾上善二（オガミ・ゼンジ）」が古沢の実家に張り込んでいると、ホームレス風の怪しい男が古沢家の郵便物を盗んでいるのを見つける。男を尾行した尾上は、返り討ちにされ意識不明の重体に陥ってしまった。

また同時期に、医療刑務所に収監されていた有働さゆりが、刑務官を襲い脱走した。

次に精神科医の「末松健三（スエマツ・ケンゾウ）」が殺された。
製材所の粉砕機に下半身を砕かれ絶命する。ここにも「カエル男」の声明文が残されていた。

末松は件の母子殺人事件で、古沢を鑑定した精神科医だった。殺された衛藤弁護士の知り合いで、共謀して古沢の心神喪失を認定した。
犯人の目撃証言から、新聞記者の尾上を襲ったホームレス風の男と同一人物である可能性が高いと判断される。

古手川は「有働さゆりや当真勝雄にシンパシーを抱いている可能性がある」と判断され疎さから外されてしまう。

だが古手川は、末松を襲った男が古沢家周辺を探っていたことから、「当真が、母子殺人事件の関係者への復讐を狙っている」と考え、出所後の古沢冬樹を尾行した。

感想

前作の『連続殺人鬼カエル男』を読んでからじゃないと、内容がつかめない。順番に読む必要あり。

幾重にも練られたどんでん返しがやっぱり面白い。
相変わらずグロい表現が多くて、ちょっと読みづらいのが残念だけど。

今回も「刑法39条」がテーマになっている。
心神喪失者の行為を罰しない、というのは「人間には自由な意思がある」という大前提に立ってのものだ。
どこまでが自由意思でどこからが環境や状況によるものなのか。自由意思を持った「健常者」というのは、本当に存在しうるのか。疑問に感じてしまう。

あと巻末の「中山作品・人物相関図」がすごくいい！
最近中山さんの作品を色々読んでいて、作品をまたぐ登場人物が多いことに気づいた。この作品ではちょい役の「御子柴礼司」とか「光崎教授」とかも、他作品で背景を知っていると深みが出てくる。