現代語訳 五輪書 完全版
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武士が兵法を行う道は、何事においても他人より優れ、勝つことである。
一対一の斬り合いに勝ち、あるいは数人に囲まれる戦に勝ち、主君のため、己の身のため名を上げ、身を立てることに繋がる。
これが兵法の徳である。
要約
宮本武蔵が「二天一流」の兵法を伝えるために残した書の現代語訳。「地の巻」「水の巻」「火の巻」「風の巻」「空の巻」の5部で構成される。
「地の巻」は兵法の概要や、剣術だけでは真の道が得られないことを説く。
武器の特徴や、戦いのリズムである「拍子」について分析している。
「水の巻」では、水のように心を器に合わせて自在に変えることを説く。
心を平常に保つべきことや、刀の構え方、足使いなど、具体的な剣術を指南する。
「火の巻」では個人戦だけでなく、多人数での合戦での戦い方も分析する。
有利なポジションの取り方や、精神的に相手を押さえつけることの重要性を説く。
「風の巻」では、二天一流以外の流派について書き表す。
他流派の武器へのこだわりや、目の使い方に異を唱える。
「空の巻」では無形で知ることのできない心を「空」と見立てて語る。
感想・考察
誉田哲也さんの「武士道シックスティーン」が面白かったので、そこで出てきた五輪書に興味を持ち読んでみた。
未だ戦乱期だった江戸時代初期の書だけあって「勝つ」ことに徹底的にこだわった実践的な内容だ。
明治時代に残る「武士道」を描いた新渡戸稲造の書をみると、その頃には精神論や道徳論、あるいは政治理論となっていたが、宮本武蔵の時代には、まだ生々しい戦いの手引きだった。
現代とは時代背景が違いすぎて、技術的な部分で直接役立てることができる部分は少ないと感じたが、暑苦しいほどの「勝負への徹底したこだわり」を見せられると、自分が今「ぬるい生き方をしてるな」と思い知らされる。
戦国時代と比べるとオブラートには包まれているけれど「勝者総取り」のシビアさは、今でも変わらないのだと思う。