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朧月市役所妖怪課 妖怪どもが夢のあと

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あらすじ

朧月市役所妖怪課 河童コロッケ』『朧月市役所妖怪課 号泣箱女』に続くシリーズ完結編。

かつて日本中にいた妖怪を集め隔離された「朧月市」を舞台に、市役所「妖怪課」の面々が活躍する 妖怪ファンタジー×ミステリ×お仕事小説。

前市長である黒乃森は、妖怪と人間が共存する朧月市を目指し、妖怪と住民のトラブルを解決する「妖怪課」の活動も支援していた。
期間限定で朧月市に派遣され「妖怪課」に配属された宵原秀也は、公務員としての仕事に夢を持ち、市民への貢献に全力を尽くしていた。

一方、黒乃森の対立陣営は、妖怪を殺して退治する民間団体「揺炎魔女計画-フレアウィッチ・プロジェクト」と結びつき「妖怪課」のお役所仕事に不満を持つ住民の支援を取り付けていった。最終的には、秘書朽片の裏切りで黒野森は市長職を辞することになる。

黒乃森辞職後の市長選挙では、黒乃森の政策を引き継いで妖怪と人間の共存を目指す陣営と、朽片ら妖怪に対して強硬な姿勢を取る陣営が対立していた。
「妖怪課」の解散を公約とする朽片は、対立陣営への妨害工作を重ね優勢を決定づけた。妖怪課の存亡がかかった宵原たちは、朽片の不正を暴き、彼の市長就任を阻止した。

市長就任を諦めた朽片は直接的な手段で目的の達成を目指しはじめる。

感想

前作までは謎解きミステリ要素が濃かったけれど、シリーズ締めの本作では最終決戦へ向けた盛り上がっていく。わりと「能力バトル」っぽい展開。


主人公の宵原も、最後の敵 朽片も、それぞれが理想を掲げ夢の実現に向け行動している。

朽片は「諸外国 対 日本」レベルで考え「日本全体のためであれば、一部の犠牲を厭うべきではない」といしている。

一方、宵原は「地方自治体」レベルで考え「地域住民の一人一人を大切にすべき」という行動基準を持っている。

この物語は、市役所で働く人や、そこで共存する地域住民と妖怪たちの視点で物語が展開されている。
だからこそ同じ立場に立つ宵原は「正義」で、別の立場から見ている朽片は「悪」にみえる。

だが、もしこれが国家の盛衰を描く「歴史書」だったら、朽片の行動が「正義」になるのかもしれない。
さらに「超国家での統合」を目指し人の視点からは、国家間のパワーバランスに拘泥している朽片は、ふたたび「悪」にみえるのかもしれない。

宵原が「妖怪と人間の共存」を目指すのは、朧月市にとっての「正義」かもしれないが、妖怪によって人生を狂わされた一人の少女の視点では「悪」にみえるかもしれない。

ひとつの行為でも、よって立つ物語が異なれば見え方が変わってくる。

作者は、夢に向かって行動していくことを賞賛し「夢を持つ人には責任がある」とまでう。
一方で、違う物語をもっている人たちの間で、お互いの「夢」が衝突することも描いている。

「信念に基づいて行動しながら、自分とは異なる多様性を受容する生き方」が求められている。
ここで「異物である妖怪との共存」というテーマに還ってくるのだろう。

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